チャールズ・ステップニー

2022年09月09日

リリースされたばかりのチャールズ・ステップニーの「Step on Step」というアルバムを聴いた。
アルバム通してめっちゃメロウなインストで、とっても切なくなってしまった。

リリースに際して告知された情報を引用すると

アース・ウィンド&ファイアー、ミニー・リパートン、マリーナ・ショウ、マディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフ、テリー・キャリア……、数々の重要な録音に携わり、1976年に早すぎる死を迎えた伝説のプロデューサー、アレンジャー、作曲家であるチャールズ・ステップニー。

そんな彼の事実上のデビュー・アルバムとなる、貴重なホームレコーディング作品のリリースが遂に実現する。4トラックのテープ録音のコレクションとして残された音源は、ほとんどがステップニーのオリジナル曲であり、1960年代後半から1970年代初頭にかけて、シカゴのサウスサイドにある自宅の地下室でステップニー一人によって創り出されたものである。彼や他のアーティストによって二度と録音されることはなかった。

カニエ・ウェスト、ア・トライブ・コールド・クエスト、ザ・フージーズ、MFドゥーム、マッドリブをはじめ、ステップニーのサウンドはヒップホップの世界でも愛されてきた。『Step on Step』は、現在のトラックメイキングの先駆けともいえる貴重な音源であり、ステップニーの業績を改めて知らしめる原石のような全23曲を収録。

チャールズ・ステップニー、事実上のデビューALとなる貴重なホームレコーディング作品リリース

とのこと。

自分はプロデューサーに疎く、チャールズ・ステップニーという名も、彼の往年の仕事も全く知らなかったが、関わったメンツを見るかぎり、名うてのプロデューサー、アレンジャー、作曲家だったよう。
「Step on Step」に収録されている曲たちも、抜群に素敵なメロディや、ハッとする展開がたくさん散りばめられている。
でもそれだけだと、数多あるソウルやAORの名盤に同じく、「いいね!」って感じで、聴き流せてしまったはず。

シカゴのサウスサイドにある自宅の地下室でステップニー一人によって創り出された」「4トラックのテープ録音のコレクション」なわけで、自分の耳に馴染んだソウルやAORの澄んだな音質とは対極的な、角の取れたまるっこい音がアルバム全体を覆っている。
リズムマシン、ベース、シンセ、エレピ(くらいだろうか)の最小限の楽器が、ラフにミックスされ、おまけにリズムのタイミングも危うかったり、曲のエンディングが唐突なフェードアウトだったり、曲自体も短かったり。
ジャズ、ファンク、ソウル、AOR、といった音楽ジャンルの指向性でいえば、忌避すべきことと思われるそれらの要素に、思いっきりハートを掴まれてしまった。

もともと、音のゴージャスさ、曲構造の複雑さから、AORは聴衆として享受するもの、というイメージが強くあった。
大好きな盤を聴いても、ケツを蹴られるような、ガレージパンクを聴いた時のような体験はできなかった。あくまで、聴衆として楽しむもの。
でもこの「Step on Step」を聴くと、「おれもやりたい!」っていう気持ちがほわっと湧いてくる。AORのガレージ的解釈なのか?
もしこれらの曲が、ガッツリ編曲され、ピッカピカのスタジオで名手たちによって演奏・録音されたものだったら、きっと「いいね!」で終わっていた。
高度な作曲センスと、地下室の4トラのテレコ。チャールズ・ステップニーの創作メモとしてデモ録音されたものだと推測すると、ラフさ加減も納得できる。
今回のような形で世に出るとは、当時の本人は想像していなかったと思うけど、出してくれて本当にありがとうございます。

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